湯葉日記

日記です

うどん会

28日からひとり暮らしみたいな生活をしている。父はまだ入院しているのでちょくちょくお見舞いに行くのだけど、手術のせいで声帯に傷がついたらしくあんまり声が出ないのでずっとささやき声で会話している。

父は喉をかすれさせながらも病院の悪口を延々言っていて(「お粥から液体のりの味がする」「ここは独居房か」「地獄みたいな病院だな」)、元気そうでなによりだよと安心する。父のせいでこのごろ私まで小さい声でしゃべる癖がついてしまった。

 

 

 

先週、名古屋のひとから実家に味噌煮込みうどんセットが10食分届いた。父は入院してるし母は酒飲みなのでうどんを消費できる人員がいなかったらしく、私の家にうどんセットがそのまんま届いてしまった。

段ボールに入った10食分の生うどんを見て呆然としてしまい、最初の5食はどうにか具材を工夫しながら朝、昼、夜、朝、夜と食べたのだけどもうこれ以上味噌の匂いを嗅いだら泣いてしまうというところまで追い詰められて、ツイッターでリプライをくれた友だちをきのう家に呼んだ。

友だちは笑っちゃうくらいおいしそうにうどんを食べてくれて、「僕おいしく食べるのうまいんだよね」と言われてあー呼んでよかったと思った。おかげで2食分を消費した。1食分は近所に住んでいる友だちに分けた。

残り2食分になったところで別の友だちふたりが味噌煮込みうどんを食べたいと連絡をくれたので快諾してまた家に呼んだ。冷蔵庫を開けたらうどん2玉がドーンとあっておまえの命もあと数時間だからなと上機嫌でいたら、信じられないことにもう味噌煮込みペーストがない。

どうやらうどん10食分に対して味噌煮込みペーストは8食分しかついてなかったらしく、けれど「味噌煮込みうどん会をします」と宣言してひとを呼んでしまっている以上味噌煮込みうどんをしなければ嘘になると思い、家にあった信州の白みそを使ってオリジナル味噌煮込みうどんをつくった。

こうなってくるとたくさん届いたから仕方なく、とかではなくふつうに趣味で味噌煮込みうどんをしているひとだな私は、と思って複雑な気持ちだった。できあがったオリジナル味噌煮込みうどんはペーストよりもおいしかったのでよかった。

 

 

 

友だちがうちのルンバを見て「へえ、思ったより大きいんだね」と犬みたいな扱いをしてくれたのでいいやつだなマジでと思う。彼らとこたつでみかんを食べながら孤独のグルメを見たりしていたら年末のコスプレをしているみたいで笑ってしまった。友だちのひとりが朝までうちにいてくれて、YouTubeうしろシティかが屋のコントを見たりして楽しかった。

朝の6時半、友だちをバス停まで送ったら近くのニトリのでかい看板を境目にして半分が夜、半分が朝の空になっていて冬はなんでも綺麗だなと思う。

 

 

 

きょうは大学の友だちがお昼にきて鍋をする約束をしていたのだけど、起きたら12時58分でドヒャアとなった。彼女に買い物を頼んできのうの晩の洗い物をしていたら部屋から味噌の匂いがするのに気づいて泣きそうになってしまう。「味噌以外ならなんの鍋でもうれしい」と伝えたら鍋は水炊きになった。

水炊きを食べながらドキュメント72時間スペシャルを見て、樹木葬の回でボロ泣きしてしまった。私も死んだら樹木葬がうれしいな、桜の下に埋めてほしいと思った。

友だちはそのあと好きな人に会いにいく予定があったらしくて、改札で見たうしろ姿はキラキラしていてかわいかった。好きな人に会いにいくひとを見送るのは人生のうれしいランキングベスト50に入るなと思う。

 

 

 

友だちを見送ってひとりで歩きながら、あ、なんかこれは家についたらさみしくなってしまう気がする、と思って花屋に寄った。赤い花をたくさん買う。

花を生けながら案の定さみしかった。いままでひとり暮らしというのをしたことがなくて、母と父もよくしゃべるひとたちだったからなんの音もしない家というのに慣れていないのだと思った。

マンションの上のほうの階でも意外と車の音って聞こえるんだなと思って、ずっと聞いていると頭がおかしくなりそうだったのでSpotifyT.M.Revolutionを聴くことにした。

さみしいとかあんまり思ったことがなかったけど、それは周りのひとたちがさみしくなくしてくれていたんだなと当たり前のことにびっくりした。あしたもまた友だちに会えるのでうれしい。きょうはルンバとふたりで晩酌している。