湯葉日記

日記です

忘れる体、やわらか青豆、400円

2020/9/13 長い眠りから起きるとき、たいてい体の右か左を壁に大きくぶつける。10時間くらい寝ると脳がアパートのドアや家具の配置をぜんぶ忘れてしまうしくみになっているみたいで、目を覚ましてから数秒のあいだ、自分が家の全体図に対してどのへんにいる…

0.5人販売、ベーコン、「顔が見たい」

2020/4/5 近所の花屋さんが0.5人販売を始める。店先に花と料金箱を並べて、花を選んで料金を払った客が立ち去ると同時に店内からスタッフさんが出てきてお金を回収するシステム。店内のスタッフさんに用事があるときは店の外から電話をかけてください、ガラ…

踏むと死んじゃう床、オンライン豪邸、フリック音

2020/4/4 雑居ビルのなかのバーに行く夢を見たのだけど、そのバーにはほかの店のなかを通らないと行けないつくりになっていた。通り抜けるために入った1階の店のマスターに「そのへん踏むと死んじゃうから気をつけてね」と言われて床を見る。ふつうの床とま…

アパートの幌、ステテコ、伸びる花

2020/4/3 向かいのアパートの解体工事が3月から止まっている。トラックの幌みたいな布が建物全体をつつんだまま、風が吹くと向こうに四角い区切りが透けて見えるからたぶんあれは部屋。冬、請求書の宛名書きを4回も書き間違えたのがショックでベランダに出て…

北区の夕焼けチャイムの音質の向上、その他

春だからかインターネットの友だちたちが各所で日記をつけ始めていてうれしい。こういうときにひとの日記を読めるのはたのしいしホッとする。 私もしばらく日記を書こうと思う。飽きちゃうかもしれないけど、もし1週間続いたらえらいえらいと褒めてほしい。 …

ガリガリ君が絶対に当たってしまっていた期のこと

10代のときものすごくくじ運がよくて、ガリガリ君を買うたびに当たりが出ちゃってた時期があった。実家のすぐそばにセブンがあって、そのセブンは私が高3のときにできたのだけど、オープン初日、地元のひとたちの行列に並んで辛いチキンとグミかなんかとガリ…

狐の祭りに参加する

じつは20年前から狐に憑かれているのだけど、住んでいる街の近くで狐の祭りがあると聞いて縁を感じ、行くことにした。祭りは大晦日の晩から深夜にかけて続くという。誘ってくれた友人とその祭りで年を越す約束をして、年末を待っていた。 30日、朝方に眠って…

うどん会

28日からひとり暮らしみたいな生活をしている。父はまだ入院しているのでちょくちょくお見舞いに行くのだけど、手術のせいで声帯に傷がついたらしくあんまり声が出ないのでずっとささやき声で会話している。 父は喉をかすれさせながらも病院の悪口を延々言っ…

食道がない

朝、手術室のある階に着くと、父が病室から出てくるところだった。のろのろと看護師さんのうしろを歩いていた父は私に気づくと「お、おう」と言った。どうやら手術着姿をひとに見られることに照れているのらしかった。 角を曲がるとき、鳥をつかまえるみたい…

笑顔チャンピオンだった日

リクルートが派遣スタッフ向けにAIを使った「笑顔研修」を始めたというニュースを見て、某テーマパークでアルバイトしていたときのことを思い出した。AIからじゃないけれど、私も笑顔研修を受けたことがある。 特定されてしまう可能性があるのでボンヤリした…

ふり返らないタイプのひと

このごろご飯が最後まで食べられない。なにを食べていても半分くらいで眠気がしてきて残してしまう。食欲がないというよりもものを噛んで飲み込む気力がない。 気力を司る部位をアルコールで麻痺させればどうにかなるんじゃないかとも思っていたのだけど、ど…

魔女について私が知っていること

覚えている限り人生最初の記憶はフィリピンパブのオーナーにブチ切れている母の姿で、バケツを持った彼女がそのなかの水をスーツ姿のオーナーに勢いよく浴びせかける様子を、私は2階の窓から見下ろしていた。まだ元気だった祖母が窓から母に向かってなにごと…

これより海中

8月の最終週になるとコンビニに花火が売っていないなんて知らなかった。すべての棚をなんど確かめても、そのニューデイズにはUNO以外の一切の玩具がないのだった。 店の外のガラスに背を預けてぼんやりと立っていると、人波の向こうに友だちが見えた。こちら…

だめな季節

むかしから7月頭に向いてなくて、この時期がくると鬱っぽくなってしまう。見る夢のほとんどが悪夢だし、そのくせいちど寝ると10時間は起きない。 雨の音、というか雨があたる街の音を聞きながら眠っている。私の家の目の前は大通りで、朝方になると運送業者…

鳩と視線

強くなろうなんて人生で思ったことがない。けど、毎日は勝手に私のことを少しずつ強くしているみたいで、このごろは初めてのひとの前で文字を書いても手が震えたりしなくなった。 友だちもそうみたいだった。大学1年のとき、同じバンドのボーカルだった彼女…

1-1-1

1-1-1なんて住所は馬鹿みたいで忘れようがなかった。魔法のカードみたいな装飾が全面にあしらわれた真っ黒の玄関扉を見たとき、やっぱりここだという気持ちが確信に変わった。 扉をふたつ隔てた向こうでなにか喋っている母が見える。父はその隣で吹き抜けに…

もうどこかわからない駐輪場

真夏だけに着る黒いワンピースは熱を吸ってぎらぎらと光っていた。 足の裏が痛い。天ぷら、ステーキハウス、蟹料理の看板を立て続けに見送って、私たちはそれでも歩き続けていた。 梅田での仕事までの空き時間だった。 二日酔いの体を阪急電車のシートに預け…

催眠術がとける日

自分は陽気だ陽気だと言い聞かせていたら最近、ほんとうに陽気みたいな感じになりつつある。 去年の夏に会ったのが最後の人と久しぶりに会うことになったとき、あの夏の自分がすごい笑う人だったのかそうじゃなかったのかがいまいち思い出せなくて、レバーを…

生活のためのメモその1

Evernoteでつけていた生活のためのメモがだいたい半年分溜まった。 生活のためのメモというのは、日々暮らすなかで「こうしたほうが生活がちょっとよくなる」と思ったことを覚えておいて、iPhoneでちまちま打っていたメモのことだ。 ずっと溜めていたら増え…

知らない人とパフェを食べた日

赤の他人とロイヤルホストでパフェを食べたことがある。 ログインすることがめっきり減ったミクシィを久しぶりに開いたその日、受信箱に知らない人からメッセージが届いていた。 突然ごめんなさい、驚かないでくださいという短い前置きのあと、メッセージは…

練馬の公園のベンチにさえ席順はある

大学名を早慶に変えると埋まってたはずの説明会の日程が全部○になるとか、あの子陰キャのくせに急に目頭切開してきたよねとか、地方に単身赴任してるお姉ちゃんが早く結婚しろって親に言われて病みかけてるとか、そういう話のなにもかもが一気に無理になった…

客のいない店の店主は

写真を撮るためにそこに置かれた物の位置を替える、みたいなことを今年は極力しないようにしたいと友人が何年か前に言っていた(もしかすると言ったんじゃなくてツイートしてたのかもしれない。記憶が曖昧)。ああいいなと思って、たまに写真を撮ることがあ…

亀のいる家

実家の匂いというものに初めて気づいた。1ヶ月ぶりに帰ったら、小学校のときに友達の家の玄関で感じたようなビミョーな違和感があって、靴を脱ぎ終えて初めて「あ、これがこのうちの匂いだったのか」と気づいた。手を洗ったり夫と話したりしていたら違和感は…

「iPhoneやばいですね」

酔って落としたり踏んづけたりを繰り返していたらiPhoneの画面がいよいよバキバキに割れ、電話中に突如音量がめちゃくちゃになったり、画面の灯りが一日中消えず夜その明るさでうなされたりするようになってしまった。 半年に1度くらいのペースで訪れている…

彼氏が私を口説いた店3選

ここ一年で印象的だったデートを振り返ろうとしたら飲み食いしたもののことばかり書きたくなってしまい、図らずも「酒呑みカップルにおすすめの店3選」的記事になってしまった。せっかくなのでそのままの(ニュアンスの)タイトルで公開します。 【赤羽】丸…

マジックミラー

新居の部屋のクローゼットの扉はセンターラインを引いたみたいに天井から床までが鏡張りになっていて、朝、その前で胡座をかいてメイクをしていたら、むかしマジックミラーのある店でバイトをしたことがあるのを思い出した。 2回ある。 1度目は大学4年生だっ…

詩とバスマット

私がかつて想像した25歳の私はひとりだった。 結婚も特定の相手との交際もしておらず、友達は少なく、都内に独り暮らししていて、時どき演劇や食事のために外出する。 そういうことになる予定だった。 高1のときにミクシィを通じて舞台のチケットを譲ってく…