湯葉日記

日記です

シロクマの実在

すごいことを知った。シロクマ、という実在の動物がいること。
ホッキョクグマ」は知っていたし、動物園で見たこともあるのでどういう生きものかわかっていた。「シロクマ」という言葉そのものももちろん聞いたことがある、というかキャラクターの名前やかき氷の名前としても有名なので、はいシロクマですね、前任者から引き継いでおりますという感じだったのだけど、まさかそれが白い熊、「白熊」だなんて思いもしなかった。さらには「ホッキョクグマ」と同一人物だなんて。
 
しろくまちゃんのホットケーキ』を久しぶりに目にして「そういえばしろくまちゃんって犬? ウサギ?」と人に聞いたことで事態が発覚したのだけど、聞かなかったら私は一生しろくまちゃんのことを「しろくま」というあだ名の謎の動物だと思っていた可能性が高い。のらくろ、とかぐでたま、のようなジャンルだと思っていた。
 
調べていくうちに私はこれまでに何度もシロクマに出会っていたことに気づいた。上野動物園で見ていたのも、熊本で食べたやつも、すみっコぐらしのキャラクターも。白い熊だからシロクマ。シロクマは通称で、正式名称はホッキョクグマ。す、すげえ~~~。
 
「みんなペンギンを知るのと同じころにシロクマのことを知るよ」と言われて、つい最近同じ構文でなにかを教えてもらった気がするなとずっと考えていた。
右側通行のことだった。
 
私は自動車が守る交通ルールとしての「左側通行」を長らく知らず(歩行者がスムーズに室内を歩くための標語だとずっと思っていた)、大通りの左側の道を歩いているときは車と絶対にすれ違わない気がするな、と感じたのがきっかけで、ハタチくらいのときに「左側通行」の概念を得たという経緯がある。
 
それでこのあいだ「え、右側通行は知ってる?」と聞かれ、よくよく聞けば歩行者は原則的に右側通行というルールがあるとのことだった。当然、知らなかった。だって道なんて、車と自転車に気をつけるのは前提として、これから向かいたい方向側の道路を常に歩きませんか? そんなこといつどこで誰に教えてもらうんだ、と聞いたら、みんな左側通行を知るのと同じころに右側通行のことを知る、と言われて脱力した。
 
 
 
おとといの早朝、ゴミを出して家の外をウロウロしていたら、酔っぱらいに近所の中華屋までの道を聞かれた。グーグルマップを出したりして丁寧に答えていたのだが、途中で相手が「お姉さんの家どの辺なの~?」と聞いてきたので無視して携帯をしまった。けれど「彼氏いるの~?」「恋愛したことあります~?」としつこく続けてくる。うるせえな天津飯食ってとっとと帰れと思って相手に背を向けたら、相手がとつぜん「お姉さんはね、たぶん愛を知らないんですよ」と言ってきた。
 
ここできゅうに堪忍袋の緒が切れた。ふり返り、私は私で必死にやってます、つうか知ってるわ、愛は知ってるわ。余計なお世話ですはい論破、みたいなことを早口で言って(さすがにはい論破は言わなかったけれど、それ以外はほんとうに言って)、中華屋のほうを指差してあっちです!と叫びながら歩き去った。
 
あれはあれで正解だったと思うのだけど、いまになってドキドキしている。愛、本当に知っているんでしょうか?